動脈硬化の疫学
1950 年の全結核を最後に 80 年まで日本人の死因の第 1 位は脳卒中であった。それ以後も脳卒中は悪性新生物 (癌) に次いで第 2 位を占めている。
したがって日本人の動脈硬化性疾患についての疫学的研究は,脳卒中に関してのものが主役を演じざるをえなかったということができるし,このことはアメリカやヨーロッパ諸国においては狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患についての疫学的研究が主役であるのと同じ理由をもつ。
日本における近年の虚血性心疾患と脳卒中の死亡率の頻度をみると,虚血性心疾患による死亡は 1950 年は年間 9.9 人 (人口 10 万人対。以下同じ) であったものが,82 年ではほぼ 4 倍にあたる 41 人になっているのに対し,脳卒中の死亡率は 1950 年に 128 人であったものが, 82 年には 125 人と大きな増減はないようにみえる。
ところが,脳卒中の内容をみると,脳梗塞による死亡が 3.9 人から 59.8 人と約 15 倍に増えてきており, 70 年に脳出血と脳梗塞の比がついに逆転した。 (94 年の虚血性心疾患の対 10 万年死亡率は 74 人,脳卒中は 97 人,うち脳梗塞は 54.4 人である)
このように,近年日本においても虚血性心疾患や脳梗塞,いいかえれば動脈硬化性疾患が増加の一途をたどっているという事実は,大都市の一部において食品性の高脂血症に伴った虚血性心疾患がみられ,しかも 30 歳代の心筋梗塞をしばしば経験するようになったことからも十分うなずける。
以上、世界大百科事典より